遺伝子組換え食品とは? 安全性や問題視されている理由を解説

遺伝子組換え食品とは? 安全性や問題視されている理由を解説

遺伝子組換えの技術が生まれ、遺伝子組換え食品が初めて登場したのは、1990年代半ば、アメリカにおいてです。現在は、日本でも遺伝子組換え食品が流通し、さまざまな論議を呼び起こしています。いったい遺伝子組換え食品とはどのようなもので、何が問題なのでしょうか。この機会に、遺伝子組換え食品についての理解を深めておきましょう。

遺伝子組換え食品とは

そもそも、遺伝子組換え食品とはどのようなものなのかというところから、解説します。

遺伝子組換え技術の基本

遺伝子組換え食品は、遺伝子組換えの技術を使って製造された食品です。

遺伝子組換え技術というのは、ごく簡単にいうと、ある生物が特性としてもつ遺伝子を取り出し、その特性をもたせたい生物などに、取り出した遺伝子を組み込むこと。これにより、人為的に新しい性質を備えた生物を誕生させる技術です。

人間、動物、植物、微生物も含めたあらゆる生物は、代々受け継がれた遺伝子をもっています。ただし、遺伝子の状態は、常に変わらずに受け継がれていくとは限りません。突然変異により、別の性質をもつようになるケースもあります。ただし、この変化は人為的なものではなく、自然発生的なものです。

しかし遺伝子組換え技術は、人が手を加えて遺伝子を変化させます。例えば、害虫に強い性質をもつAという植物と、同じ害虫に弱いBという野菜があったとしましょう。この場合、Bを害虫から守るために一般的にとられる対策が、農薬散布です。しかし、農薬にも、環境破壊や健康被害など、さまざまな問題が指摘されています。

そこで、害虫に強いAの性質をBに組み込めば、害虫に強いBを生み出そうというのが、遺伝子組換え技術です。農薬を使わずに生産できるようになればコストが軽減できる一方で、収穫量は増加が望めます。

遺伝子組換え食品の定義と種類

遺伝子組換え食品は、遺伝子組換え技術により生産された作物、もしくはその作物を原料として作られた食品をいいます。ただし、日本では遺伝子組換え技術による栽培は、ほぼされていないというのが現状です。つまり、日本で流通している遺伝子組換え食品は、作物であれば輸入されたものと考えて差し支えないでしょう。

加工食品の場合は、日本の企業が遺伝子組換え作物を輸入して製造しているケースも、多々あります。

参考までに、日本が遺伝子組換えの農産物と指定している対象は、消費者庁のパンフレットによると、ダイズ(エダマメや大豆モヤシも含む)、トウモロコシ、馬鈴薯(ジャガイモ)、菜種、綿実、アルファルファ、てんさい、パパイヤ、カラシナの9品目です。中でもダイズ、トウモロコシ、ジャガイモは輸入量も多く、さまざまな加工品に使われています。ダイズなら、豆腐、納豆、みそ、油揚げなど、トウモロコシならコーンスナックやフレーク、油など、ジャガイモは、ポテトチップス、馬鈴薯粉などです。

なお、遺伝子組換えの農産物を原料にした食品には、そのことをはっきり表示することが義務づけられています。

遺伝子組換え食品の安全性

食品は、私たちの口を通して体内に入るものです。遺伝子組換え食品の安全性について、確認しておきましょう。

厚生労働省による安全性の確認

日本では、遺伝子組換え生物(作物も含む)を輸入し、流通、栽培などの行為をする場合は、法律に則った規制を厚生労働省が設けています。事前の申請を受けた審査により、科学的に安全性が確認できたもののみを使用できるという仕組みです。その基準となっている法律が「食品衛生法」と「食品安全基本法」です。

この観点に立てば、日本で流通している遺伝子組換え食品は、基本的には安全性が確認されているものといえるでしょう。

世界各国での安全性評価

世界では、国それぞれに基準を設け、安全性を評価しているというのが実情です。

例えば、遺伝子組換え作物の栽培で世界最大の面積を誇るアメリカでは、遺伝子組換え食品の安全性を「連邦食品・医薬品・化粧品法(FDCA)」を拠り所として、米国食品医薬品庁(FDA)が確認しています。ただし、安全性確認は自主性に任され、法的な義務はないとのこと。問題が生じたときには企業側に責任が求められるため、審査を受ける必要があると認識されてはいるものの、審査を受けない自由もあるようです。

世界への影響力があるEU(欧州連合)の状況も、確認しておきましょう。

EU加盟国で遺伝子組換え作物を栽培している国は限定的で、栽培量も減少傾向にあるようです。また、遺伝子組換え食品の安全性については、加盟国代表者の合議によりおこなわれています。そのため、確認までに相当の時間を要するというのが実情のようです。

遺伝子組換え食品の問題点

日本では安全性の確認できたものだけが流通していえるとはいえ、「口にするのは避けたい」という声が出ていることも確かです。遺伝子組換え食品の問題点について、掘り下げてみましょう。

賛否両論の背景

これまでも、数多くの作物が、品種改良という過程を経て世に出てきました。お米、イチゴ、リンゴやナシなどは、毎年のように新しい品種が登場しています。

ただし品種改良は、異なる長所をもった同じ作物をかけ合わせ、両方の長所を備えた品種を生み出すという形でおこなわれ、長い年月が必要でした。

遺伝子組換えも、目指すところは同じですが、異なる特性をもった農作物が短時間で生産できてしまうという点が、大きな違いです。

短時間で新しい作物ができれば、品種改良よりも経費が削減できます。栽培に手のかからない品種なら、資材の節約もできますし、作業も楽になるでしょう。結果的に、生産力が向上します。遺伝子組換えに賛成する層は、このようなメリットに着目しているようです。

一方で、否定的な意見もあります。食の安全性は長期的な経過を見ないと把握できないという意見、本当に安全なのかがわからないと疑問視する意見、遺伝子を操作することは生態系を乱すという声などです。

懸念される健康への影響

健康への影響では、アレルギーへの問題が懸念されています。なぜならば、遺伝子組換え食品は、これまでの自然界には存在しなかったものともいえるからです。現在のところ大きな問題や健康被害は起きていないようですが、次々に遺伝子組換え作物が登場したときに、それを口にした人が絶対にアレルギーを起こさないとは言い切れない面もあるでしょう。

健康への影響は、アレルギーだけではありません。新しい食品が私たちの健康にどのような影響を及ぼすかは、未知数です。

遺伝子組換え食品の普及状況

さて、遺伝子組換え食品の普及状況は、どのようになっているのでしょうか。日本と世界に分けて確認しておきましょう。

日本における遺伝子組換え作物の輸入状況

日本では、食料自給率の低いダイズやトウモロコシを中心に、遺伝子組換え農作物を大量に輸入し、加工食品や家畜飼育の飼料として用いられています。

ダイズの輸入国はアメリカ、ブラジル、カナダなどですが、輸入総量のうち遺伝子組換えによるものと推定されているのは、約95%です。トウモロコシは、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンからの輸入が多く、遺伝子組換えの割合は91%と、やはり90%を超える推定値が出ています。

世界での遺伝子組換え農作物の生産状況

世界に目を向けてみると、令和元年の遺伝子組換え作物の栽培面積は、約19千万haでした。前年に比べると1%ほど減少しているとはいうものの、日本の農地面積の約43倍に匹敵する値です。

面積の第1位はアメリカ、次いでブラジル、アルゼンチン、カナダの順で、ダイズとトウモロコシで約80%を占めています。

まとめ - 遺伝子組換え食品の現状とこれから

このように見てくると、遺伝子組換え食品は、日本においてもさまざまなかたちで流通しているといってよいでしょう。できれば避けたいと考えていても、知らず知らずのうちに口にしていることも、ないとは言いきれません。

日本では、きちんとした安全性の確認体制がとられていますが、人体への影響は未知の部分もあります。これからの時代は、そういったこともふまえ、安全な食品を選ぶ姿勢が大切になるのかもしれません。


免責事項:この記事の内容は読みやすさを考慮し、簡潔にまとめさせていただいております。さらに深く知りたい方は、ご自身でさらにお調べいただくことを推奨いたします。

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